高校情報科を兼業教員が学ぶ

高校生が学ぶ「情報」の授業・教材・その他もろもろについて書きます

「DXの2025年の崖」に挑むのは誰か。

なんだか今日は眠気を殺すためにブログを書いている。このあと真夜中にアメリカとのWeb会議に出るので、それまで起きているための殴り書き執筆。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の課題について、経済産業省がまとめたレポートについての日経XTECHの記事を読んだ。

tech.nikkeibp.co.jp

簡単にいうと、日本の企業の基幹システムのブラックボックス化が進み、属人化するシステムに対する費用面と人材不足の制約で、デジタル化が2025年に行き詰まるとしたシナリオを取り上げ、経営者に対する注意喚起のために政府の要人にがんばってもらおう、と書かれている(乱暴なまとめですみません)。

著者の木村さんの著書「SEは死滅する」は以前に読んだ。論調はさておき、日本独特のシステム・インテグレーション業界の将来に対する強い危機感を持ち、警鐘を鳴らし続けている方である。

 

一方で、経産省の元レポート(DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省))では、「DXシナリオ」として、"2025年までの間に、複雑化・ブラックボックス化した既存システムについて、廃棄や塩漬けにするもの等を仕分けしながら、必要 なものについて刷新しつつ、DXを実現することにより、2030年実質GDP130兆円超の押上げを実現"という対策が書かれている。

「DXシナリオ」では、ユーザー、ベンダーごとにそれぞれ以下が挙げられている。

  • ユーザー:技術的負債を解消し、人材・資金を維持・保守業務から新たなデジタル技術の活用にシフト
  • ベンダー:既存システムの維持・保守業務から、最先端のデジタル技術分野に人材・資金をシフト

日経の記事に習い、既存システムの維持・保守業務を「守りのIT」、最先端のデジタル技術分野による新サービスの開発を「攻めのIT」と便宜的に言うことにする。

私はその現場にいたので身に沁みているけれど、基幹システムが業務に組み込まれているほど、この技術的負債の解消は、一言で言い切れない多大な費用がかかってしまうのが現実だ。当事者にとっては、負債って言わないでほしいような事情がたくさん実装されていたりする。しかし「守り」の費用はどんどんカットされざるを得ない経済状況である。それでも基幹システムを使い続けなければ業務が回らないので、「守りのIT」は苦しい。よってブラックボックスになる。それを支えるのは、個々の現場の"有識者"だ。あるいは、日本企業とユーザーが、品質を諦めるほど切羽詰まるのが先か。

 

高校の教員としては、2025年にちょうど社会人になっているであろう高校生たちが、将来、何を担うのかに関心がある。仮にIT業界に入ったとして、ほとんどの若い人たちは「攻めのIT」をやりたいだろうし、そうしてもらわなければならない。というかもはやそういう流れしかないだろう。そうすると、「守りのIT」を担いながら、技術的負債を何年かかっても解消するか、システムとともに塩漬けになるのは、今、現場にいる"有識者"の中の生き残りになるだるだろう。ただちゃんとした"有識者"はハイレベルの「攻め」もできるので、社内副業っぽく基幹システムの面倒をみながら、新しいことをやるようになるだろう。

 

いずれにしても、オリンピックが終わった以降の日本の経済状況の中で、基幹システムをいかに継続して運用するか、という点が課題であることは間違いない。基幹システムの構築保守を主な仕事とするシステムインテグレータでは、現時点で、既に人材確保は困難な状況になりつつある。その中で、どれだけ魅力的な仕事を作れるかが、採用する側の勝負だと思う。「攻め」も「守り」も、そこにクリエイティビティが見いだせれば、結構楽しいんだけどね。