高校情報科を兼業教員が学ぶ

高校生が学ぶ「情報」の授業・教材・その他もろもろについて書きます

横尾忠則 幻花幻想幻画譚

横尾忠則の「幻花幻想幻画譚」を観に行った。

www.dnp.co.jp

個人的な夏休みの終わり、といっても今年は明確な休暇はなかったのだけど、二学期の授業が始まる前日で、ちょうど時間と場所の都合がよかった。平日の昼間で、赤ちゃん連れのママと高齢の方が多かった。

瀬戸内寂聴さんの小説「幻花」の新聞連載時の挿画を、小説の筋とあわせて全て展示してあった。小説の筋とあわせて10枚ずつのセットに設営されており、ひととおり筋を見ながら320作品全部を通して観た。挿画の原画展で1枚ずつは小さいので展示の面積はそれほど大きくない。

感想は、圧巻の一言。言葉で表すのが難しい。新聞連載なので日次更新で、極細の線で描かれた絵、それに直線や図形やベタ塗りがコラージュみたいに合わせられている。よく記事や解説に書かれるとおり、室町時代の話なのにUFOが飛来したり、挿画にお経がびっしりと書かれていたり、寂聴さんの肖像が載ったり、そういうアイデアももちろん面白いが、絵を描いている人の気持ちを想像しながら見ていると面白い。笑ってしまったのは、「双子」の出自に関わるエピソードのあたりで、双子を思わせる黒と白の巨大な球がなにか岩山のようなものに乗っかっている絵に、「あまり/物語めいて/いますよ」というキャプションがつけられ、小説の内容に挿画が一言コメントするみたいなメッセージになっているもの。とにかく自由。寂聴さんの「幻花」も読みたくなった。

1974−75年の連載で、当時の横尾さんは38−39歳。よほどのインプットと発想とパワーだ。「さまざまな文化の断面をシェイクすることで、自分自身をコンヒューズ(混乱)させないと、ものは生まれてこない」と2016年の産経新聞の記事にあった。

教職、技術職でやっていると、方法論や技術、便利ツールを使うこと自体に流れがちだけれど、インプットの幅や深さを広げること、想像力とか発想力を伸ばすほうが大事だと思う。「クリエイティブ職」(のことはよく知らないが)にとっては当たり前だろうけど。まだまだ自分はやれていないが、そういう授業は学ぶ人も教える人も面白いだろう。