「社会と情報」授業の例(4月・5月)
1学期の中間テストが終わりましたが、情報科ではテストをせず、プレゼンの相互評価を素点に反映することにしました。1学期半ばまで来たところで、中間報告です。生徒の状況、学校のインフラや体制の状況が見えてきて、カリキュラムを都度、見直しながら進めています。
新人の講師と言いながらカリキュラムも授業の内容も全部私が決めています(教員と時数が少ない情報科アルアルですが)。また、情報科だから当然ですが、高校で一番ICTをつかっている人みたいになってしまいました。その方面の校務の会議でやたら喋っています。
このブログでいただきたいのは実践報告に対するフィードバックです。ご意見・感想・指摘・反論など歓迎いたします。
4月
- 導入は、Gartnerの”Top Predictions for IT Organizations and Users in 2018 and Beyond”を紹介し、5年後にどうやってて稼ぐかを考えるペアワーク、そのあと年間の計画ガイダンス。
- 情報メディアの歴史の流れで、グループワークでMixed Reality(VRやARが日常生活や仕事の中で使われる技術)を使った商品を企画。
- 隔週で授業のリフレクションをFormsで生徒から集め、生徒の声に教員からの回答をポータルサイトで提示する。生徒による入力は校内の機器/NW状況に応じてスマホを使う。入力は以降も継続。生徒からの声が私のモチベーションの全てである。
- 授業のスライドや教材、生徒の作成物は全てOne driveで共有。情報配信・共有するためのポータルは、MS Sharepointでは重すぎてストレスフルなので、Wordpressで自作。教材や作成物のリンク集として、生徒がいつでも参照できるようにする。
5月
- 商品企画の討議とプレゼンの構成検討まではアナログ(紙、ホワイトボード)、資料作成はOffice 365 onlineのPowerpointで、グループのオンライン共有で一気に片付ける。wifiのボトルネックに捕まった端末は諦め、ほかのメンバーとパソコンを共有して協働するように柔軟に切り替える(これは苦肉の策。IT環境の制約は後述)
- プレゼンの評価項目はTEDとToast Mastersのエッセンスを拝借。内容、構成、資料デザイン、話し方の観点で生徒が相互評価する。本当は評価データの入力はGoogleかMSのFormを使いたいけど、環境の制約、必ずしも全員がネットワークに繋がらないので、マークシートを自作。生徒の入力はアナログ、教員の集計から後はデジタル化して楽をする。プレゼンの定量評価は集計して発表。定性評価は、教員の講評と、他の生徒からのフィードバックを返す。
- 情報のディジタル表現として、基数表現(2進法・16進法、文字コード、音、画像、動画などディジタル表現の仕組みの座学と演習(片手で31まで数える方法、JIS8文字コード表を使い「告白メッセージを暗号文(2進数)で伝えよう」みたいな)
- ディジタル表現の特徴の話し合いと合わせて、ディジタルだからできることとして、GIMPを使ってアニメーションGIFを作ってみる演習。
サンプルで私が作ったアニメGIFはこんな感じです。
ちなみに元画像は、友人Shoji氏が販売するLINEスタンプのGarlicgentleman。許可をもらい授業のため二次創作しました。興味がある方はぜひスタンプGETしてください。
運用・IT環境の要件・制約
- 授業は1クラスにつき週2時間。連続したコマではない→無駄なく活動を入れる必要がある
- 情報教室(CALL室)が不在。ノートPCのカートを教室に運び、授業する。PC(Windows10)は貸出(翌年からは生徒はBYOD(Bring Your Own Device)になる)→効率よく機器を立ち上げられるように授業を組み立てる必要がある。
- 校内N/W環境はWifiのみ。授業で使えるファイルサーバーは無し。生徒用のUSBメモリなどの記憶媒体もない。データ共有はOne driveのみ。
- Active Directory認証をログイン時に行うことが前提なので、WifiがつながらないとPCを使えない。
- 教室内のWifi含むネットワークインフラは「整備中」(生徒たちの同時使用に耐えないケースがあるので"情報システム部門"と調査を進める)
- 学校はMS office 365を採用(個人的にはgoogle classroom の方が軽く使える印象があるが、生徒にアカウントをいちいち使い分けさせたくもないので、学校の方針に従う)
つまりPCへのログインも、データ共有も、もちろんネットでの検索やForm入力も、すべてWifiが前提なのですが、ネットワークがボトルネックになるケースが多いです。高校生に対し、アンプラグド的に進めるにも限界があることは明白なので、対処が必要なものは、多方面に働きかけ対処しています(決意)
6月半ば以降はは情報リテラシーに関するディスカッションや著作権に関して授業する予定です。一斉授業の講義で事例を示すだけではツマラナイので、たとえば善意のリツイートが招く混乱・炎上みたいなネタを生徒と考えてみようと思います。
2学期はProgateまたはTech for Teachers(スタディサプリ×Life is Tech)を使って、Web作成とProcessingのプログラミングを、あとは課題解決とデータ分析を組み合わせたネタづくりをやりたいと思っています。
学校がやたらハードを持ってるので、運用面とソフトをうまいことやって、いろいろ使ってみたいです。
教員になってみて気がついたこと
いざ教員になり気がついたのは、教員はクリエイティブ・ワークショップ企画職だということ。自分に無いものを取り入れて勝負しないと、授業は面白くなりません。よく教員は社会経験がないから、とか批判する人は多いですが、社会経験があるからといって、面白い授業ができるわけではありません(そもそも学校も立派な社会だと思いますが、その話はまた別の機会に)。
一斉授業ほど教える側にとって楽なものはないけど、それでは生徒はもちろん、教員もツマラナイ。情報科は実技教科であり、生徒が自分で考え手を動かすことが面白くないと、学びへのきっかけはつかめません。面白いとは何か?何が生徒の心に火をつけるか?それを考えてナビゲートすることが大事で、教員はこれを考え実践し続ける必要があります。
あと、周囲(学校の同僚の先生、支援スタッフ、保護者、民間、世間一般etc)の意見を取り入れることも必要ですが、周囲は必ずしも現場と、指導要領で示されるやるべきことの全体を把握しているわけではありません。授業をする教員本人が、プロとしてぶれないことはとても重要。だからこそ、皆さんのご意見にはどんどん触れたいと思うので、どうぞコメントをください。
ちなみに、「情報」の高校学習指導要領の現行版はこちらです(文科省のページのPDFが開きます)。私の学校では「社会と情報」を採用しています。ざっくり言うとこういうことをやります。
「社会と情報」
情報の特徴と情報化が社会に及ぼす影響を理解 させ 、情報機器や情報通信ネットワークなどを適切に活用して情報を収集、処理、表現するとともに効果的にコミュニケーションを行う能力を養い、情報社会に積極的に参画する態度を育てる。
(1) 情報の活用と表現
(2) 情報通信ネットワ ークとコミュニケーション
(3) 情報社会の課題と情報モラル
(4) 望ましい情報社会の構築
学校(管理職)からは、これに加えて「プログラミング」「ビジネス思考」なども加えることが求められています・・・。さーどうする先生。
ブログを始めます
2018年の4月から、パートタイムで、とある高校の先生になりました。担当する教科は「情報」です。20歳年下のダイバーシティに溢れる高校2年生と、週に3日、顔を合わせるようになりました。自分が中年になったことを自覚せざるを得ないフレッシュな日々を送っています。
週3日しか働いていないわけではなく、教員でないときは、USのEdtech(教育IT)ベンチャーの日本法人で仕事をしています。
新任の教員としては、外に出せる範囲で情報を晒し、ご意見をいただいて授業や教材の質をより良くしたいと思っています。ご意見・感想・指摘・反論など歓迎いたしますので、どうぞコメントをください(コメントは当面、承認してから表示するようにしていますが、運用はいずれ変えるかもしれません)